まぼろしの一億円。

月日が流れるのは早いもので、母が亡くなってもう一年がたちました。

ちょうど命日の頃、母の親しくしていたピアノの先生から突然お電話をいただきました。

「今日はね、典子ちゃんにどうしても話しておきたいと思って、思い切ってお電話したのよ」

二度ほどしかお会いしたことがない方からそう言われて、私は思わず身構えました。

「母が何かしでかしましたでしょうか?」

「そうじゃなくて、

加代ちゃん(母の名前)はね、貴女をとっても大事に思っていたのよ。

それをお知らせしたくて。

65歳を過ぎた頃、お付き合いのあった保険の外交員の方に勧められて、

ある生命保険に入ったの。」

母が付き合いで保険をあちこちかけていた事は知っていたので適当に聞いていると、

それは70歳までに他界したら一億円の保険金が貰えるというとんでもないもので、

働いていたお給料のほとんどをその支払いに充てていたというお話でした。

「散々やめなさいって言ったのに、典子に何も遺してやれないからって聞かなくてね。

でも、、加代ちゃん全然元気だし、どう頑張っても70で死ぬわけないのよ。

案の定、70歳なんてあっという間に超えてったものね」

そうそう、母は90歳までしっかり人生を謳歌しましたよ。

もう時効だし,思い出話として聞いてほしいと先生は笑っていました。

まったくしょうがない人だなぁ…

宵越しのお金を持たない人だったけど、一攫千金まで狙ってたなんて!

そんな調子だから、亡くなるまでに綺麗に貯金を使い果たしてくれました(笑)

一億円はまぼろしだったけど、

産んでくれてありがとう。

きちんと育ててくれてありがとう。

ちょっとズレてるけど、いっぱい愛情注いでくれてありがとう。

 

 

 

 

 

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